ダイアローグ×発達障害児(者)支援研究を学会発表

障害児(者)の経済的自立を目指す支援をソーシャルフランチャイズで展開するデコボコベース株式会社の精神保健福祉士である山藤志織さんが、「ダイアローグ」をテーマにした発達障害児・者支援の研究について、第58回日本精神保健福祉協会全国大会・第22回日本精神保健福祉士学術集会(2023年11月4日)にて、ポスター発表を行いました。

我が国では、精神保健医療福祉施策が、入院医療(治療)中心から地域生活(予防・活躍)中心へと転換され、この変化に伴い、障害福祉サービスの提供者は、さまざまな立場から多様なニーズに応えていく必要が近年では増えてきたのですが、障害福祉業界全体として、その社会的および当事者のニーズに応えきれていないと指摘されており、デコボコベースでも、それらの課題は存在しているのだそうで、その事実から目を背けることなく、課題解決の第一歩として、本研究を外部機関とともに約2年前から取り組み始め、今回のポスター発表を行うことができたようです。

研究の概要

「ダイアローグ」をテーマとした2年間の社内研修を下記のように行いました。

  • 対象事業:児童発達支援事業、放課後等デイサービス事業、自立訓練(生活訓練)事業、就労移行支援事業
  • 対象者:各事業のサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、その他支援者の合計13名
  • 内容:アドバイザーの協力を得ながら、「ダイアローグ」の概要(重要性と手法)の座学、ロールプレイやグループディスカッションを通じた実践、ピアラーニングの実施。
  • 期間:2022年4月~2023年8月(研究は現在も継続中)

ダイアローグとは、フィンランド西ラップ地方にあるケロプダス病院で、ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキルらによって1980年代に開発され、それらの地域では、統合失調症患者の入院治療期間が平均19日短縮され、通常治療では、100%の服薬が必要な患者の割合は35%にとどまったといわれ、2年後の調査で症状の再発がない、あるいは軽いものにとどまっていた患者は82%(通常治療50%)、再発率も24%(同71%)と大きな成果を出しており、その結果を受け、世界各国で導入が進み、近年日本国内でも「ダイアローグ」の考え方が注目されてきはじめています。

「ダイアローグ」は、「オープンダイアローグ」を代表とする「対話」を用いたアプローチのことで、私たちが考える対話とは「相手の話を丁寧に“聴く”こと」「相手が自分で問題を解決していくための“語り”の場」としています。

対話の3大要素

  1. 対等性
    • 支援者と利用者の関係性に上下はない
    • 支援者の見解を伝える場ではなく、本人の語りを聴いていく
  2. 多様性
    • 正しい、間違っているなどの評価も判断もされない
    • どのような意見であっても尊重される
  3. 不確実性
    • ゴールが決められていない→結論が出ないこともある
    • 解決へ導くことではなく、対話を続けることが目的である

研究結果

導入前後の比較において、相談者(事業所利用者の親)の発話量が34%から82%へ増加。支援者の、支援における相談者への関り時に変化を感じられたかについての割合は、10段階評価で7以上が69.2%もいることがわかりました。

まとめ

その他の本研究詳細も踏まえると 「利用者の潜在的ニーズの発見」「支援者の支援における選択肢の増加」「相談者自身での問題解決力の醸成」の3点がまとめとなり、つまりは、相談者の自己決定が促されることにより、相談者および支援者の新たな可能性が広がることが期待されます。

本研究の結果を研修および支援における仕組みへ取り入れ、支援者の「支援質・生産性・自己理解」の向上を目指し、当社内の志を同じくするソーシャルフランチャイズであるパートナー企業(加盟企業)への水平展開を行うことで、ソーシャルインパクトを最大限にし、障害福祉業界全体の課題解決に向けて、中長期的・継続的に効果検証を進めていきます。


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