学齢超過教育、東北で成果

重い障害で義務教育を受けられず、学齢期(6~15歳)を大幅に過ぎて就学した「学齢超過者」への教育が、東北で成果を残しているのだそうで、多くの卒業生を出し、一部の県では既に役割を終えつつあるのだそうです。

宮城県立西多賀支援学校高等部の3年山路智子(59)さんは重症心身、視覚の両障害があり、2015、16年度に小中学部で学び、20年度に高等部へ進学したのだそうで、同校での学びを通じて自分から握手するなど自発的になり、美しい手織り物も仕上げているのだとか。

「もっと早く就学していたら、と思う時もあるが、学校でいろんなことができるようになった」と、来年3月の卒業を前に、母の智恵子さん(90)は教育の効果をかみしめているようで、昨年度に担任した佐々木さやか教諭(53)は、授業にジャズや機織りを取り入れるなど10代の生徒相手とは違う工夫もしているようで「新型コロナウイルス対策で授業はリモート中心だが、智子さんは人との関わりを楽しみ、学びへの意欲がある」と話しています。

学齢超過者について、宮城県教委は11年度に特別支援学校の小中学部(2年間)、17年度に高等部(3年間)の就学を許可しており、小中学部は18年度までに40人が卒業し、高等部は在学中に11人が亡くなってしまったようですが、21年度までに20人が卒業したのだそうです。

学齢超過者の教育機会確保を長年訴えてきた「県重症心身障害児(者)を守る会」によれば、小学部入学時の40人の年齢は48~71歳で、昨年3月に光明支援学校高等部(泉区)を卒業した佐藤裕美さん(62)の母ますみさん(86)は「ようやく終えられたとの思いだ。娘の生き生きとした表情がうれしい」と喜んでいます。

守る会は、就学が実現した11年度、担当教師を招いた「教育を語る会」を始め、学習の事例発表や家族や支援者らとの意見交換を実施してきており、現在はコロナ禍で休止中だが、秋元俊通会長は「成果を共有し、年を重ねても教育は人生を充実させると実感した」とコメントしています。

秋田除く5県で機会確保

学齢超過者の教育は1979年の養護学校(現特別支援学校)義務化時点で学齢を過ぎていた人たちが対象となっており、全国重症心身障害児(者)を守る会と各地の守る会などが国や都道府県教委に訴え、各教委が受け入れの可否や在学期間を判断してきました。

東北では、秋田を除く5県が教育機会を確保し、青森、山形、福島の3県では既に全員が卒業し、宮城は現在、特別支援学校3校の高等部で計7人が学んでおり、福島では98年度、特別支援学校の小中高等部で受け入れが始まり、2015年度までに49人が学び、山形は07~15年度に実施し、人数は非公表となっています。青森は12年度開始で、最終年度と人数は不明。

岩手は04年度に中等部で開始し、希望者は高等部へ進学、22年度までに計64人が学び、現在は中等部に5人が在籍し、県教委の担当者は「対象者は高齢化したが、病院と施設の入所者を調査すると毎年のように希望者が見つかる」と話しています。

就学を施設入所者のみに限る県が多い中、宮城は在宅も可能としています。

学齢(がくれい)とは学校に就学して教育を受けることが適切とされる年齢のこと。


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