発達障害への支援は、子どもの頃だけの話ではなくなった
発達障害への理解は、以前と比べて社会の中で広がってきています。
かつては、学校生活での困難や仕事上のつまずきが、本人の努力や性格の問題として受け止められることが多かったのですが、現在では、発達障害の特性を踏まえ、教育や就労、日常生活を支える制度が整備されてきています。
その変化を示す節目が、2005年の発達障害者支援法の施行と、2016年の同法改正、さらに2024年4月には、民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されました。
支援の対象も、子どもだけに限られておらず、学校から就職、職場での定着、地域での生活まで、ライフステージを通じた支援が制度に位置づけられています。
では、法律や制度が変わったことで、実際にどのような支援が用意されるようになったのでしょうか?
発達障害者支援法によって、支援の考え方が変わった
発達障害者支援法は2004年12月に公布され、2005年4月に施行されました。
この法律の目的は、発達障害のある人が自立し、社会参加できるよう、生活全般にわたる支援を進めることにあり、対象となる分野は幅広い。
- 発達障害の早期発見と発達支援
- 学校教育での支援
- 就労機会の確保と職場定着
- 地域生活への支援
- 家族への相談や情報提供
- 発達障害に関する知識の普及
大きな特徴は、医療や教育だけでなく、福祉や労働など複数の分野が連携して支援する考え方を法律に盛り込んだこと。
2016年には同法が改正され、同年8月に施行され、改正では、発達障害のある人を取り巻く社会的障壁を取り除くことや、乳幼児期から高齢期まで切れ目なく支援することが基本理念に加えられていて、注目したいのは、支援の視点が本人の特性だけでなく、周囲の環境にも向けられたこと。
例えば、口頭での指示を理解することが難しい人に対して、職場が手順を書面で示したり、学校で集団の指示を聞き取りにくい子どもに対して、個別に説明する機会を設けるなど、こうした対応は、本人の特性と環境との関係を考える支援の一例になっています。
学校では、子どもの特性に応じた教育支援が進められている
発達障害のある子どもへの支援は、学校教育でも制度に位置づけられていて、発達障害者支援法第8条では、子どもの年齢や能力、特性を踏まえた教育的支援を行うことが定められています。
その具体的な取り組みの一つが、個別の教育支援計画と個別の指導計画で、これは、学校だけでなく、医療・福祉などの関係機関とも連携しながら、長期的な支援を考えるためのものです。
一方、個別の指導計画は、学校での学習や生活において、具体的にどのような指導や配慮を行うかを整理したもので、次のような対応があります。
- 課題の手順を一つずつ示す
- 予定や変更点を事前に伝える
- 口頭の説明に加えて視覚的な情報を使う
- 集中しやすい座席や学習環境を整える
必要な支援は子どもによって異なり、診断名だけで一律に決めるのではなく、本人の困りごとや教育的ニーズを踏まえて考えることが重要となってきます。
また、学校生活の支援は、教育機関だけで完結するものでもなく、家庭や福祉機関などとの情報共有も、継続的な支援を考えるうえで大切な要素になっています。
2024年、民間事業者にも合理的配慮が義務化された
社会の変化を示すもう一つの節目が、2024年4月1日。
この日、改正障害者差別解消法が施行され、これまで努力義務だった民間事業者による合理的配慮の提供が義務に変わりました。
合理的配慮とは、障害のある人が社会生活を送る際に直面する障壁を取り除くため、個々の状況に応じて必要な対応を行うことで、発達障害の場合、次のような対応が考えられます。
- 説明を口頭だけでなく文章でも伝える
- 曖昧な指示を具体的な手順に分ける
- 予定やルールの変更を事前に知らせる
- 問い合わせや相談の方法を複数用意する
ただし、合理的配慮の内容は、本人の特性や利用するサービス、置かれている状況によって変わってきますし、事業者には過重な負担にならない範囲で対応することが求められ、本人から配慮の申し出があった場合には、どのような対応が可能かを話し合うことも大切です。
なお、雇用されている人への職場での合理的配慮は、障害者雇用促進法に基づく別の仕組みで扱われています。
2024年の法改正によって、合理的配慮は一部の先進的な企業だけが取り組むものから、民間事業者に法律上求められる対応へと位置づけが変わっているんです。
相談や就労を支える公的な窓口もある
発達障害について相談したいとき、最初から専門医療機関を探す必要があるというわけでもなく、相談内容に応じた支援機関がそれぞれ設けられていて、主な窓口には、次のようなものがあります。
発達障害者支援センター
発達障害のある本人や家族などからの相談を受け、日常生活、発達支援、就労などについて情報提供や助言を行う機関で、都道府県や指定都市を中心に設置されています。
ハローワーク
仕事を探している人に対して職業相談や職業紹介を行う場所で、障害のある人を対象とした専門的な相談・支援体制も設けられています。
地域障害者職業センター
職業評価や職業リハビリテーション、職場への適応を支えるジョブコーチ支援などを行う。
障害者就業・生活支援センター
仕事に関する相談だけでなく、日常生活や地域生活に関する相談にも対応し、就業面と生活面を一体的に支援する。
相談先によって役割が異なるため、生活上の困りごとを相談したいのか、仕事を探したいのか、職場への定着を支援してほしいのかによって窓口を選んでください。
制度が整っても、支援につながるまでには段階がある
法律の制定や改正によって、発達障害のある人を支える仕組みは広がり、学校では教育的支援、職場では合理的配慮、地域では相談や就労支援というように、生活のさまざまな場面に制度が用意されています。
とはいえ、制度が存在することと、必要な人が実際に支援を受けられることは別の問題で、相談先を知らなければ支援機関につながるきっかけは得にくいですし、学校から職場へ、あるいは就職から職場定着へと環境が変わるときには、支援の内容や担当機関も変わってしまいます。
また、合理的配慮は個々の状況に応じて話し合う仕組みであり、同じ診断名でも必要な対応は異なり、そのため、制度の内容を知ることに加え、どこに相談すればよいのか、どのような支援を求められるのかを把握することが重要になってきます。
発達障害をめぐる社会の変化は、法律の制定や義務化だけで測れるものではありません。
制度が学校や職場、地域の中でどのように使われ、本人の生活に結びついているかという視点も欠かすことはできません。