「発達障害」とは何か:脳の働き方の違いと日常生活への影響を正しく理解する

「発達障害は、脳の働き方の違いにより、物事のとらえかたや行動のパターンに違いがあり、そのために日常生活に支障のある状態です」という説明を目にすることがあります。

しかし、この短い定義だけでは「具体的にどんな状態なのか」「生まれつきの特性なのか」「支援は受けられるのか」といった疑問は生まれてきます。

発達障害の定義と「脳の働き方の違い」の意味

発達障害とは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態を指し、 厚生労働省や内閣府の政府広報オンラインでは「脳機能の発達が関係する障害」「生まれつきの脳の働き方の違いによって、幼少期から考え方や感じ方、行動の仕方に特徴がある」と説明されています。

重要なのは、発達障害が「育て方やしつけの問題」「環境の影響」で起こるものではないという点で、外見からは障害があることがわかりにくく、周囲から「わがまま」「怠けている」と誤解されやすいことも。

「脳の働き方の違い」とは、神経の伝達や情報処理のプロセスに個人差があることを意味していて、これにより、同じ状況でも物事の捉え方や反応の仕方が異なり、学校・家庭・職場など複数の場面で年齢から期待される水準と比べて困難が生じることがあります。

代表的な発達障害の種類と特徴

発達障害にはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なる特徴を持っていて、代表的なものとしては、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の3つが挙げられます。

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳の働き方の違いにより、幼いころから対人・コミュニケーションの難しさと、興味や行動の偏りが続きやすい状態で、 主な特徴として以下が挙げられます。

  • 相手の表情や態度よりも、文字や図形、物の方に関心が強い
  • 他人に対する興味が薄く、相手の気持ちや状況を理解することが苦手
  • 言葉や視線、表情、身振りなどで他人とコミュニケーションをとるのが苦手
  • 特定のことに強い関心を持っていたり、こだわりが強かったりする
  • 見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきっちりしている
  • 聴覚や視覚、触覚など感覚の過敏性をともなうこともある

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症(ADHD)は、生まれつきの脳の働き方の違いにより、注意の向け方や行動のコントロールに特性がある状態で 「不注意」「衝動性」「多動」を特徴とし、人によってどの特性が優勢になるかは異なります。

  • 気が散りやすく、集中が続きにくい(不注意)
  • うっかりミスや忘れ物が多く、整理整頓が苦手
  • じっとしているのが苦手で、思いつくとすぐ行動してしまう(多動・衝動性)
  • 気持ちの切り替えが難しく、言葉や行動が先に出てしまいやすい
  • 次々と周囲のものに関心を持ち、エネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い

学習障害(LD)

学習障害とは、全般的な知的発達に遅れはないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」などの特定の能力を学んだり行ったりすることに著しい困難を示す状態で、 文字や文章を読むこと、書くこと、計算することなど、特定の分野の学習だけが極端に困難という特徴があります。

なお、これら3つのタイプは単独で現れることもあれば、複数の障害が重なって現われることもあり、チック症(手足をもじもじと動かす、教室で席を立つことが多いなど)や吃音なども発達障害に含まれることがあります。

診断基準と「日常生活に支障」の判断

発達障害の診断には、国際的な診断基準であるDSM-5(米国精神医学会)やICD-11(世界保健機関)が用いられ、 これらの基準では、単に特性があるだけでなく「学校、家庭、職場などの複数の場面で」「年齢や発達レベルに見合わない」レベルの困難があり、それが「社会的・学業的・職業的な機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている」ことが診断の条件となります。

つまり、「少し集中力が低い」「人付き合いが苦手」といった程度では発達障害とは診断されませんし、複数の場面で持続的に困難が生じ、日常生活や社会生活に支障が出ている場合に、初めて「障害」としての診断が下されることになります。

また、発達障害の特性は年齢や生活環境によっても現れ方が異なり、幼児期には多動が目立っても、大人になるにつれて衝動性は目立たなくなり、代わりに「忘れ物が多い」「時間管理が苦手」といった不注意の特性が仕事場で問題になることもあります。

大人になってから発達障害に気づくケース

発達障害は「子どもの障害」と思われがちなのですがが、実は大人になってから生まれつき持っていた発達障害の特性が浮かび上がり、人間関係や仕事でつまずき、初めて発達障害に気づく場合があります。

特に、以下のような経験がある場合は、発達障害の特性が背景にある可能性があるかもしれません。

  • 仕事上で悪気がないのに人を怒らせてしまったり、重要なアポイントを忘れてしまったりする
  • 整理整頓が苦手で、ケアレスミスが多い
  • 忘れ物や落とし物、遅刻が多い
  • 頼まれていた仕事や約束を忘れる
  • 集中ができず、作業にミスを生じやすい

大人になってから気づく場合、それまで「性格の問題」「努力不足」と思い込んでいたことが、実は脳の働き方の違いによるものだったと知り、安堵する人もいれば、戸惑う人もいます。

いずれにせよ、正しい知識に基づいた理解と、必要に応じた支援を受けることが重要です。

支援の仕組みと相談窓口

発達障害かもしれないと感じた場合、または既に診断を受けている場合、公的な支援制度や相談窓口が用意されています。

日本では、発達障害者支援法に基づき、都道府県や指定都市に「発達障害者支援センター」が設置されており、診断・療育・就労・生活などに関する相談を受け付けています。

また、こども家庭庁や厚生労働省も、発達障害のある人と共に働く上でのポイントや、企業向けのeラーニング教材などを提供しています。

大人の場合、地域の障害者就業・生活支援センターや、ハローワークの専門窓口でも相談が可能です。 医療機関での診断を受けるには、精神科や心療内科、小児科(子どもの場合)を受診し、専門医による評価を受ける必要があります。

支援の内容は、療育(子どもの場合)、職業訓練、就労支援、生活支援など多岐にわたり、個々の特性や困りごとに合わせた計画が立てられます。

正しい理解と社会の受け入れ

発達障害は「障害」という言葉からネガティブな印象を持たれがちですが、実際には「脳の働き方の違い」であり、特定の分野においては逆に優秀な人が存在することもあります。

例えば、ASDの特性を持つ人が細部への注意やパターン認識に優れ、ITエンジニアや研究者として活躍するケースも少なくありません。

重要なのは、発達障害のある人を「特別な存在」として扱ったり、過度に保護したりするのではなく、特性を理解した上で適切な配慮を行い、社会の一員として共に生きていくこと。

政府広報オンラインも「精神・発達障害についての正しい知識と理解を持って、温かく見守り、支援する応援者となっていただく」ことを呼びかけています。

発達障害について正しく理解し、必要に応じて専門機関に相談することで、本人も周囲もより良い関係性を築くことができるはずです。


投稿日

カテゴリー:

タグ:

関連記事