友達とけんかした。お母さんに怒られた。そんなとき、柔らかい物体を握りつぶす。
子どもたちの間で人気が広がっている「スクイーズ」は、シリコンなどで作られた柔らかなおもちゃで、お菓子、パン、猫の肉球といった形をしていて、押すとトロリとつぶれ、手を離せば元へ戻るという玩具。
ある雑貨店では、取り扱いが100種類以上にも増えているようで、子どもの一人は約10個を持つほどの人気ぶりで、イライラしたときに触ったりするのだとか。
不思議なのは、子どものおもちゃが「遊ぶ物」だけでなく、感情を処理する道具として語られていること。
昔なら、怒ったときに鉛筆をいじったり、消しゴムをちぎったり、机の下で指を組むといった動作はあったのですが、スクイーズは、その無意識化の動きだけを取り出し、肉球やパンの形を与え、商品棚へきれいに並べた物のよう。
スクイーズはどんなに触っても元の形へ戻り、子どもがどれほど強く握っても、怒りをぶつけても、しばらくすると何事もなかったような顔をします。
感情を受け止める道具としては、かなり優れたものでもあり、助言をせず、反論もせず、握られた事実さえ表面に残しません。
友達とのけんかや親に叱られた出来事まで消えるわけではないのですが、ストレス解消としてはかなり優秀な部類に入りそう。
シールが集めて眺める遊びだとすれば、スクイーズは気分によって形を変える遊びであり、どちらも手のひらに収まるが、片方は保存するための物、もう片方は何度でも変形させるための物で、ブームがシールからスクイーズへ移ったことまで、子どもの感情の動きに合わせた交代のように見えてきます。
10個持っているなら、怒りの種類によって担当を決めることもできそうで、友達とのけんかには肉球、宿題にはパン、理由の分からない不機嫌には正体不明のトロトロした物体。
これは想像にすぎませんが、100種類を超える売り場には、それくらい細かく感情を分類できるだけの在庫があり、子供たち自分のストレスを上手に克服できる術があります。
けんかは簡単には元へ戻りませんし、叱られた気分もすぐには消えません。
それでも手の中の肉球だけは、何度つぶしても元の形になり、どうしようもないイライラを触感によって緩和してくれているのでしょうね。